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物語とか詩みたいなのを書き綴っちゃったりしているブログです。
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初恋の人
2010.04.23 (Fri)

また衝動的に書いた平安もの。
史実とは異なることを御承知でお読みください。
資料はありません。
完全な妄想と自己満足です。



**


 定子は腫れぼったい目をこじあけた。
 外の光がまぶしい。
 
 どれくらい、泣いたのだろう。

 父が死に、あれよこれよと実家が荒れていく中、ついに兄が都から追放された。
 自分を守ってくれるものはもう何もないのだ。
 検非違使が立ち去り、喧騒の余韻が残る部屋を定子が見回したとき、ふと目にはさみが目に入った。
 衝動的に何もかもが憎くなった。
 
 突然死んでしまった父も

 矢を射かけた兄も

 定子の家族を貶めようとしている叔父も

 はさみを手に取り、力任せに髪を切った。
 「定子様、おやめください!!」
 近くにいた女房たちが慌ててはさみを取り上げる前に、もう一度切った。
 
 はらはらと落ちる自分の髪を見ても、定子は何も感じなかった。

 「もう嫌だ…」
 そっと静かに呟いた。枯れたはずの涙が目から溢れてくる。
 定子の呟きは騒ぎの中に溶け込んで、誰にも届かなかった。
 
 
 いつの間にか寝ていたらしく、女房たちも定子をそっとしておくことに決めたのだろう。誰も周りにいなかった。しかし、はさみや髪を切れそうなものも徹底的に定子の周りからなくなっていた。
 定子は短くなった髪に手を伸ばす。
 髪を切ったら清々しい気持ちになるものだと思っていた。
 なのに思い出したのは最愛の人の顔だった。
 髪を切ってしまえば、もう会えない。
 幸いなのことに、量の多い髪の一房くらいを切ったようなものだったから、未遂で終わるかもしれない。だけど定子は宮中に戻る気が起きなかった。
  定子は自分の中の何かがぽっかりと抜け落ちてしまったような気分だった。
 目じりに涙がたまっていく。

 もういい加減、泣きつかれてもいい頃なのに…。

 生温かい涙が自分の冷えた頬を伝っていくのがよく分かった。
 拭こうとも思わなかった。
  
 「入ってもいいかな?」

 御簾の裏から声が聞こえたと思った瞬間、相手は返事を待たずに入って来た。
 定子は慌てて顔を隠す。

 「定子…?」
 戸惑いながらも、相手は近づいてくる。
 膝を折ると、そっと定子の手をつかんで降ろさせると、定子の泣きはらした目を覗きこんできた。
 その様子は昔とちっとも変らないのに、そこには青年の顔があった。
 良くも悪くも、何もかもがあの頃と変わってしまったのだ。
 定子の涙を拭う手は、優しくて温かく、とても心地よかった。
 後から後から出てくる涙を、定子は止めることなど出来なかった。
 縋るように胸に飛び込むと、確かな力で包まれる。
 「もう大丈夫だから…ごめんね…」
 何も大丈夫なことなどありはしないのに、彼の言葉を聞くとひどく安心した。
 (あなたが謝ることなど、何ひとつないというのに…)
 そう言いたかったけど、代わりに嗚咽が口から漏れる。そしてその声に応えるようにさらに強く、定子はしがみつき、抱かれるのであった。

 「髪を…切ってしまったんだね…」
 しばらくして定子が落ち着くと、ぽそりと一条帝は呟いた。
 その声からはどんな感情の色も読み取れなかったが、定子は胸が苦しくなる。
 胸に頭をあずけたまま、消え入りそうなほど小さな声で「ごめんなさい」というのが精一杯だった。
 「君が謝ることはないんだ」
 優しく定子の髪を撫でつけながら、一条天皇は答える。
 そしてそっと定子の身体を自分の身から引き剥がすと、まっすぐ定子の目を見つめた。くっと息をのみ、はっきりとした声で言った。

 「君に、宮に戻ってほしいんだ」

 定子の心は揺れる。見つめ返す先の瞳は、まったく揺れていなかった。
 幼いころから、時たま頑固な一面があった。その時の瞳がそこにはあった。

 だけど

 「…駄目よ、できないわ…」

 思わず目を逸らす。
 「なぜ」
 想定内の返答だったのだろう。相手の声は動揺していなかった。

 だって

 「髪を切ってしまったもの」

 わたしはきっと中宮でいられなくなるから 

 「そんなこと、関係ない。全ての髪を切ってしまったわけではないのだから」
 力強い声が返ってくる。

 「それに反対されるにきまっているわ」

 たくさん女御が入ってくるだろうから

 「そんなもの、わたしがどうにかする。子供に会いたいと言えば、誰も何も言えない」
 強引に定子の顔を自分の方に向けさせる。いつの間に、こんなに精悍な顔つきになっていたのだろう。改めて実感する。

 もう 大人の男の人だから

 だから わたしの他にあなたに触れ 触れられる人が出てくるから

 「嫌なの…」
 何がとは言わなかった。言えなかった。
 まっすぐな瞳の前で、昔から定子は嘘をつけたことがなかった。
 そんな定子を見つめる目が、初めて揺らいだ。
 「それは…わたしのそばにいるのが嫌だということ?」
 「違う」
 定子は即座に答える。目の前の人に、言葉足らずで勘違いされるのはとても嫌だった。
 ぽつりと、定子は呟いた。
 「わたしは年上だわ」
 「え?」
 これから入ってくる女御たちはたぶん定子よりも若い女たちだろう。叔父が自分に気を遣うことなどないだろうから、政略として自分の娘も入内させるはずだ。
 そうなれば叔父の権力と母に逆らえない夫は、彼女たちのところへ通うことになるのは目に見えている。
 それが何より辛かった。

 しばらく黙って考えていた一条帝が、静かに口を開いた。
 「あなたは年上だけど、とても魅力的だし、妻が年上だなんてよくあることじゃないか」
 それに、と彼は続ける。
 「もし若い女御たちが入ってきても、あなた以上の人はいないよ。たとえ他の女のところへ通うことになっても、あなたほど愛する人はいない」
  そして深く息をはく。
 「一目惚れだったんだ」
 定子の手をとって優しく微笑んだ。

 「わたしの初恋はあなただ」
 
 定子はそんな夫の手を握り返すと、「ずるいわ…」と呟いた。
 
 初めは弟ができたみたいだった。夫だと言われても、実際はお互いに幼かったのだから、実感も湧かなかった。たぶん一条帝も同じだったはずだ。
 いつから恋に落ちていたのか、自分でも分からなかった。
 それを彼は自分は「一目惚れ」をしていたという。
 定子はなぜもっと早く彼への恋心に気が付かなかったのかと、自分を責めたくなった。
 思えば、幸せな日々だった。
 誰がこうなると予想できただろう。

 「今までも大切な日々だったけど、今思えば、もっとあなたとの日々を愛しめばよかった」
 定子がこぼすと、一条帝はもう一度言った。
 
 「定子、宮に戻ってくれるかい?」

 定子はその手を強く握り返すと、にっこりとほほ笑んだ。
 久しぶりに笑ったせいか、ひどく頬が強ばって上手く笑えなかったと思ったが、一条帝が真っ赤になったので、そうでもないなと安心するのであった。

 「定子、わたしはあなた以外の妻はいらないよ。わたしの本当の妻はあなただけだ」

 定子の心が、久しぶりに踊った。






*あとがき*
禿萌えるハァハァとなりまして、また書いちゃいました←
今回も後悔はしt(以下略

身ごもった人のもとへ天皇がいけるのかなんて知らん。
なぜ女房たちが天皇の訪問を知らせなかったかというのはアレです、公然のお忍びだから(何ソレ
「今から定子のところ行ってくる」と道長に宣言して行けばいいよww
情緒不安定なときに無事に子供を産める気がしなかったので、一条帝に安心させてもらったから無事に産めたんだよ!!とか妄想。
歴史的には順序違うとか知らない。何ソレ美味しいの^q^←

初恋の人ハァハァ
古典の先生が「初恋の人で特別で、本当に好きだった」的な発言をして、「帰ってきて」とお願いしたとか聞いて禿萌えてました///

うわぁぁぁぁぁぁ可愛いぃぃぃぃぃぃ!!!!!

相変わらず時間がない中、一気に書いたので駄文ですが、
温かい目で見てやってくれると嬉しいです;;
感想くれると頑張れます^^

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管理人について:
学生です。

一次創作サイトを作るのが夢でございます。
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